2010年07月27日
入れ替わりヴァーチャル・充八
テーマ:ボカロSS(長)4
続きです。話進みました。うん。
※文の一部に某有名曲からの引用があります。あしからず。
よろしかったらどぞ。
↓
つまり、
そういうことです。
「・・・・・・・顔に、・・・・?」
「そうです。ちなみに――――拒否すればこちらのお嬢様も同じ目にあっていただくことになるでしょう・・・どうぞ」
男はナイフをリンさんに手渡し、それと同時にリンさんから3メートルほど離れた。そして・・・それと同時に、私の喉元にナイフがかざされる。
「!っ・・・」
「うぃんはん(リンさん)!!・・・っふあ」
暴れていたせいか私の猿ぐつわがずるっと外れた。うまく喋れるようになる。
「やっ・・・やめてください!リンさん、そんな、そんな・・・」
「ミクさん、大丈夫です、落ち着いて。・・・・・あたしがそれをすれば、ミクさんには」
「何もしません。それが終わればお二人は解放しましょう」
「・・・・何だか、変な誘拐ですね・・・」
「どうされますか?」
私を押さえている男が私の喉元に軽くナイフをつけた。反射的に涙が目の表面を覆う。
「わかりました」
リンさんは少し怯えた表情で快諾してしまった。―――そんな!
「やめてリンさん―――わ、私は平気です!だから・・・」
「ミクさん、貴方を巻き込んでしまったことを謝ります。もう少しの辛抱ですから」
「――――――――っ!」
違う、そんなことを言ってほしいんじゃない。
「そんなこといいですから、貴方が傷つくのが嫌なだけですから、私は――――――――嫌です、そんなの、自分にされた方がまだましです!」
少し離れた所にいる彼女に手を伸ばしたくても、縛られているから出来ない。
「リンさん、逃げて!今なら」
リンさんの周りには誰もいなかった。リンさんが逃げようという素振りを全く見せないのがもどかしい(―――後になって気付いたが、倉庫に鍵くらいかかっているだろうし倉庫の外に見張りくらいはいただろう。リンさんはおそらくわかっていた)。
「・・・貴方を置いて、逃げろって・・・?」
少し呆れたように微笑んでリンさんは言う。
嗚呼、可愛い、ますます顔に傷なんて厭になる。
貴方にそんなことしてほしくない。
「そうです!」
「・・・一緒に帰りましょう。この方達が奇特にもそうさせてくれるって仰ってるんですから」
「でも、でも・・・あたしのせいでそんなこと」
「貴方は巻き込まれただけでしょう?」
「・・・・そんなこといわないでください・・・」
泣きそうになった。そんなふうに言わないでほしい。
貴方の傍にいて良かった、貴方が誘拐されたと人伝に聞いていたら心配で気絶したかもしれない、そう思っているくらいなのに。
「・・・私を無関係な人間みたいに言わないで!私にとって、貴方は一番大事な人なんですから!」
彼女は綺麗な瞳をぱちくりさせて驚いている。何を今更驚くことがありますか。
知っているくせに。
「リンさん!だから逃げて、私の為にも・・・」
「・・・・ミク、さん・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・随分と仲がよろしいようで、驚きましたが・・・どうされます?」
男達が声はリンさんに向けつつ刃物を私の喉に再び当てる。泣くものかとこらえた。
リンさんは、心なしか嬉しそうにはにかんで言った。
「・・・少々お待ちを」
彼女の右頬。
眼の下から顎にかけて赤い線が入った。
「・・・これくらいでしょうか?もう何本か入れましょうか」
「そうですね・・・お願いします」
のんびりした言葉にそぐわない痛い内容。
リンさんは淡々と自分の右頬にナイフで線を入れた。全部で縦に四本、鏡を見ながらではないからだろう、並行ではない雑な線。私は絶句していまい体から力が抜けてその場にただ突っ立っていた。
「・・・・・・・それで結構です。ん」
男はリンさんからナイフを受け取ると私を押さえていた男に顎で合図する。すると私の手を縛っていた後ろの縄が解かれたのがわかる。軽く背中を押され、私はその勢いで5歩ほどリンさんに近づく。その場で男達が引き揚げる軽い足音をただ呆然として聞いていた。
向き合ったリンさんは、私にゆっくり歩み寄る。
「・・・帰りましょう」
右頬の一見落書きのような赤い線を手で押さえつつ、優しい声で彼女は言った。
「―――――・・・どうし、て・・・やめてって、いったじゃないですかぁ・・・!」
彼女の手を引いて倉庫の外に出て、電話があるところを探しているとミクさんが言った。
ずっとぼんやりしていたから心配だったが、正気に戻ったようだ。
向き合うと彼女はぼろぼろっ と、・・・泣き出した。
「な・・・泣かないで下さい、ミクさん・・・・怪我はありませんか?・・・あぁ、縛られていたところ、赤く・・・」
暗かったが街灯の明かりで何となく色が変わっているのがわかる。こんな知らない町並みの中を彼女と手を繋いで歩くなんて妙な気分だった。
「こ、これくらい平気ですっ!それより、・・・か・・かお・・・・・・・・・・リンさん、・・・ごめんなさぃ・・・」
「・・・・何で貴方が謝るんです?」
「・・・守って、あげられなくて・・・・っ」
・・・・・・瞬間、変な顔をしてしまったかもしれない。
思いもしないことを言われたから。
・・・そうか、この人にとって僕は“女の子”だった・・・・・・そこを失念していた。
―――――――――顔に傷。
そう言われた時一番に心配だったのはミクさんのことだ。―――女の子の顔に傷なんて、絶対に・・・
彼女を無事に帰さなければ と。
そう、僕にしてみれば守るべき“女の子”はあの場にミクさんだけだったのだ。
「・・・貴方が無事だっただけであたしは嬉しいです。だから泣かないで・・・」
ミクさんは泣いて赤く染まった頬を手で拭う。しかし涙は止まらないようだ。
「私が無事でも、リンさんがそうでないなら、意味がないんですっ・・・・悔しくて・・・情け、なくて・・・涙が、とまらな・・・・」
「・・・・・・意味はあります。あたしは嬉しいです。・・・・・・貴方が、一番ですから」
「・・・ふぇ?」
「世界で一番、大事です。・・・貴方が」
顔に自分の手で刃を入れるというのは正直怖かったけど、
貴方の言葉で恐怖がどこかにいってしまった。
―――幸福を感じた時、人は何だってできる様な気になるものだから。
「・・・お嬢さん達、こんな時間に何してるんだね?」
通りかかったお婆さんが二人で赤面して動かない僕等に声を掛けてくれた。
「―――――――――ミク!!」
「あぁぁ、ミクっ」
「っカイト兄さん・・・ルカ姉さん」
夫とルカは妹分に飛びつくように駆け寄り抱きしめた。私は一瞬ほっとしたが、
―――リンさんの顔を見てすぐに背中が冷えた。
カイトとルカも気付いたようで凍りついたように動きを停止した。
「り、――・・・・・リンさん」
リンさんは申し訳なさそうに微笑んだ。
――――――――手と顔に微かについた血。右頬から離さない手。
もうすっかり深夜、近隣住民から電話を受けた警察から誘導され、最寄りの交番で保護されていた二人を車で迎えにきた私達。後ろにもう一台車が到着した音がした。クオとレンさんが乗っている車だ。レンさんは飛び出してきたがクオはゆっくり降りて、ミクとリンさんの姿を遠目で確認しほっとした顔になった。
「・・・りっ・・・・・・・」
レンさんは座って顔を押さえているリンさんに駆け寄って、50センチほど前で止まった。
数秒静かに見つめ合う双子。
すると徐にレンさんがリンさんの腕を掴み、その顔から引っぺがした。
「「「「!!」」」」
――――――――――――少女の顔には、四本の赤い線・・・傷があった。
わなわなと震えた少年はすうっと息を吸い込んだ。
「・・・・・・・――――――――――なに、やってんのよ、このばかぁっ!!」
少年は墳怒の表情で少女の頭に勢いよくチョップした。
「痛っっ」
「何なのよ、その顔!―――なんでそんな事になってるの?!」
「・・・えぇと、なんていうか・・・」
「もぉぉぉ、何がどうなればそんなことになるのよ!」
少年・・・は、少女の首根っこの服を掴んで前後に揺さぶった。その場の人間は全員双子を凝視しているのだが二人は気付いていないらしい。
少女は揺らされながらきょとんとして言った。
「・・・・・・・・・・・・男の振り、やめたの?」
―――――――――――――――・・・・・・・・・
少年?が憮然として返す。
「・・・・・・あぁ、忘れてたわ。あんたのせいよ!」
「えぇ?!」
「大体ねぇ、なにカンっタンに誘拐されてんのよ!そンなんだからいつまでたってもヘタレなのよ、わかってんの?!」
「い、意味がわからないよ・・・」
「あぁ?!!」
「ぁ、ぃぇ・・・」
唖然としている周りには目もくれず、双子は続けた。
「誰にされたのよ、言ってみなさい殺してきてやる」
「お、落ち着いて・・・・覆面してたから誰とかわからないし」
「信じられない、乙女の顔にこんな、有り得ない、絶対殺す!!」
「だから落ち着いてって!―――――そんなに気にしてないから。大騒ぎすることでもないって・・・・・・・乙女じゃないし」
――――――――――――――・・・・・・・・・
「そうかもしれないけどっ」
「ね、―――――――もう、帰ろう」
・・・少女?はにこっと人好きする笑顔を浮かべた。するとすぐに顔を痛みに歪めた。
「痛むの?」
「・・・口角をあげるとちょっと」
キィッと音を立てて到着した車から、二人転がり落ちるように降りてきた。
「―――レ ン さ まぁぁぁぁぁぁ!!・・・ってぅおおおおお?!」
「―――坊ちゃんっっ!!ああああよくぞ御無事・・・―――じゃない!?な、な、なんすかそのお顔はぁぁぁぁぁ!!」
「・・・二人とも、もう少し静かに・・・」
「れれれレン様―――――――――!病院に!今すぐ!」
「ぼぼぼぼ坊ちゃんの可憐なお顔に傷がぁ――――!!」
「ああもううるさいわよふたりとも!だまらっしゃい!!・・・さぁ、
・・・・・・・・・・・・・・・帰ろ。 ――――レン」
「・・・・うん」
「あ―――・・・ったく、 今日は最っ悪の一日だった!」
レンさん・・・?が差し出した手に、リンさん・・・?が手を重ねた。
少女・・・?は顔を押さえながら立ち上がり、ふとこちらを向いて申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
車に乗り込んで去っていく五人(運転手も含めて)を、それを見ていた私達は一言も発せずに見送った。
その後もしばらく一言も発さなかった。
後々、わかったこと。
この誘拐の犯人――― あの男達の依頼主 は結局不明で捕まらなかった。
カイトの推測では、鏡音家に恨みのある会社のどこかがはらいせに企んだことだろうという。
“女性の顔に傷”―――が引き起こすこととは、
鏡音家子女への精神的ダメージは勿論、初音家の長男の妻が社交場に顔を出さないとあったら会社にはマイナスにしかならないし、その前に下手すれば初音と鏡音の間に亀裂が入り婚約・協力関係も解消されるかもしれない―――――と。
このもう少し後に私達は、
犯人とその依頼主の目論見は完全に失敗したことを理解する。
続
(・・・・・・・・・・ん?え?)
※文の一部に某有名曲からの引用があります。あしからず。
よろしかったらどぞ。
↓
つまり、
そういうことです。
「・・・・・・・顔に、・・・・?」
「そうです。ちなみに――――拒否すればこちらのお嬢様も同じ目にあっていただくことになるでしょう・・・どうぞ」
男はナイフをリンさんに手渡し、それと同時にリンさんから3メートルほど離れた。そして・・・それと同時に、私の喉元にナイフがかざされる。
「!っ・・・」
「うぃんはん(リンさん)!!・・・っふあ」
暴れていたせいか私の猿ぐつわがずるっと外れた。うまく喋れるようになる。
「やっ・・・やめてください!リンさん、そんな、そんな・・・」
「ミクさん、大丈夫です、落ち着いて。・・・・・あたしがそれをすれば、ミクさんには」
「何もしません。それが終わればお二人は解放しましょう」
「・・・・何だか、変な誘拐ですね・・・」
「どうされますか?」
私を押さえている男が私の喉元に軽くナイフをつけた。反射的に涙が目の表面を覆う。
「わかりました」
リンさんは少し怯えた表情で快諾してしまった。―――そんな!
「やめてリンさん―――わ、私は平気です!だから・・・」
「ミクさん、貴方を巻き込んでしまったことを謝ります。もう少しの辛抱ですから」
「――――――――っ!」
違う、そんなことを言ってほしいんじゃない。
「そんなこといいですから、貴方が傷つくのが嫌なだけですから、私は――――――――嫌です、そんなの、自分にされた方がまだましです!」
少し離れた所にいる彼女に手を伸ばしたくても、縛られているから出来ない。
「リンさん、逃げて!今なら」
リンさんの周りには誰もいなかった。リンさんが逃げようという素振りを全く見せないのがもどかしい(―――後になって気付いたが、倉庫に鍵くらいかかっているだろうし倉庫の外に見張りくらいはいただろう。リンさんはおそらくわかっていた)。
「・・・貴方を置いて、逃げろって・・・?」
少し呆れたように微笑んでリンさんは言う。
嗚呼、可愛い、ますます顔に傷なんて厭になる。
貴方にそんなことしてほしくない。
「そうです!」
「・・・一緒に帰りましょう。この方達が奇特にもそうさせてくれるって仰ってるんですから」
「でも、でも・・・あたしのせいでそんなこと」
「貴方は巻き込まれただけでしょう?」
「・・・・そんなこといわないでください・・・」
泣きそうになった。そんなふうに言わないでほしい。
貴方の傍にいて良かった、貴方が誘拐されたと人伝に聞いていたら心配で気絶したかもしれない、そう思っているくらいなのに。
「・・・私を無関係な人間みたいに言わないで!私にとって、貴方は一番大事な人なんですから!」
彼女は綺麗な瞳をぱちくりさせて驚いている。何を今更驚くことがありますか。
知っているくせに。
「リンさん!だから逃げて、私の為にも・・・」
「・・・・ミク、さん・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・随分と仲がよろしいようで、驚きましたが・・・どうされます?」
男達が声はリンさんに向けつつ刃物を私の喉に再び当てる。泣くものかとこらえた。
リンさんは、心なしか嬉しそうにはにかんで言った。
「・・・少々お待ちを」
彼女の右頬。
眼の下から顎にかけて赤い線が入った。
「・・・これくらいでしょうか?もう何本か入れましょうか」
「そうですね・・・お願いします」
のんびりした言葉にそぐわない痛い内容。
リンさんは淡々と自分の右頬にナイフで線を入れた。全部で縦に四本、鏡を見ながらではないからだろう、並行ではない雑な線。私は絶句していまい体から力が抜けてその場にただ突っ立っていた。
「・・・・・・・それで結構です。ん」
男はリンさんからナイフを受け取ると私を押さえていた男に顎で合図する。すると私の手を縛っていた後ろの縄が解かれたのがわかる。軽く背中を押され、私はその勢いで5歩ほどリンさんに近づく。その場で男達が引き揚げる軽い足音をただ呆然として聞いていた。
向き合ったリンさんは、私にゆっくり歩み寄る。
「・・・帰りましょう」
右頬の一見落書きのような赤い線を手で押さえつつ、優しい声で彼女は言った。
「―――――・・・どうし、て・・・やめてって、いったじゃないですかぁ・・・!」
彼女の手を引いて倉庫の外に出て、電話があるところを探しているとミクさんが言った。
ずっとぼんやりしていたから心配だったが、正気に戻ったようだ。
向き合うと彼女はぼろぼろっ と、・・・泣き出した。
「な・・・泣かないで下さい、ミクさん・・・・怪我はありませんか?・・・あぁ、縛られていたところ、赤く・・・」
暗かったが街灯の明かりで何となく色が変わっているのがわかる。こんな知らない町並みの中を彼女と手を繋いで歩くなんて妙な気分だった。
「こ、これくらい平気ですっ!それより、・・・か・・かお・・・・・・・・・・リンさん、・・・ごめんなさぃ・・・」
「・・・・何で貴方が謝るんです?」
「・・・守って、あげられなくて・・・・っ」
・・・・・・瞬間、変な顔をしてしまったかもしれない。
思いもしないことを言われたから。
・・・そうか、この人にとって僕は“女の子”だった・・・・・・そこを失念していた。
―――――――――顔に傷。
そう言われた時一番に心配だったのはミクさんのことだ。―――女の子の顔に傷なんて、絶対に・・・
彼女を無事に帰さなければ と。
そう、僕にしてみれば守るべき“女の子”はあの場にミクさんだけだったのだ。
「・・・貴方が無事だっただけであたしは嬉しいです。だから泣かないで・・・」
ミクさんは泣いて赤く染まった頬を手で拭う。しかし涙は止まらないようだ。
「私が無事でも、リンさんがそうでないなら、意味がないんですっ・・・・悔しくて・・・情け、なくて・・・涙が、とまらな・・・・」
「・・・・・・意味はあります。あたしは嬉しいです。・・・・・・貴方が、一番ですから」
「・・・ふぇ?」
「世界で一番、大事です。・・・貴方が」
顔に自分の手で刃を入れるというのは正直怖かったけど、
貴方の言葉で恐怖がどこかにいってしまった。
―――幸福を感じた時、人は何だってできる様な気になるものだから。
「・・・お嬢さん達、こんな時間に何してるんだね?」
通りかかったお婆さんが二人で赤面して動かない僕等に声を掛けてくれた。
「―――――――――ミク!!」
「あぁぁ、ミクっ」
「っカイト兄さん・・・ルカ姉さん」
夫とルカは妹分に飛びつくように駆け寄り抱きしめた。私は一瞬ほっとしたが、
―――リンさんの顔を見てすぐに背中が冷えた。
カイトとルカも気付いたようで凍りついたように動きを停止した。
「り、――・・・・・リンさん」
リンさんは申し訳なさそうに微笑んだ。
――――――――手と顔に微かについた血。右頬から離さない手。
もうすっかり深夜、近隣住民から電話を受けた警察から誘導され、最寄りの交番で保護されていた二人を車で迎えにきた私達。後ろにもう一台車が到着した音がした。クオとレンさんが乗っている車だ。レンさんは飛び出してきたがクオはゆっくり降りて、ミクとリンさんの姿を遠目で確認しほっとした顔になった。
「・・・りっ・・・・・・・」
レンさんは座って顔を押さえているリンさんに駆け寄って、50センチほど前で止まった。
数秒静かに見つめ合う双子。
すると徐にレンさんがリンさんの腕を掴み、その顔から引っぺがした。
「「「「!!」」」」
――――――――――――少女の顔には、四本の赤い線・・・傷があった。
わなわなと震えた少年はすうっと息を吸い込んだ。
「・・・・・・・――――――――――なに、やってんのよ、このばかぁっ!!」
少年は墳怒の表情で少女の頭に勢いよくチョップした。
「痛っっ」
「何なのよ、その顔!―――なんでそんな事になってるの?!」
「・・・えぇと、なんていうか・・・」
「もぉぉぉ、何がどうなればそんなことになるのよ!」
少年・・・は、少女の首根っこの服を掴んで前後に揺さぶった。その場の人間は全員双子を凝視しているのだが二人は気付いていないらしい。
少女は揺らされながらきょとんとして言った。
「・・・・・・・・・・・・男の振り、やめたの?」
―――――――――――――――・・・・・・・・・
少年?が憮然として返す。
「・・・・・・あぁ、忘れてたわ。あんたのせいよ!」
「えぇ?!」
「大体ねぇ、なにカンっタンに誘拐されてんのよ!そンなんだからいつまでたってもヘタレなのよ、わかってんの?!」
「い、意味がわからないよ・・・」
「あぁ?!!」
「ぁ、ぃぇ・・・」
唖然としている周りには目もくれず、双子は続けた。
「誰にされたのよ、言ってみなさい殺してきてやる」
「お、落ち着いて・・・・覆面してたから誰とかわからないし」
「信じられない、乙女の顔にこんな、有り得ない、絶対殺す!!」
「だから落ち着いてって!―――――そんなに気にしてないから。大騒ぎすることでもないって・・・・・・・乙女じゃないし」
――――――――――――――・・・・・・・・・
「そうかもしれないけどっ」
「ね、―――――――もう、帰ろう」
・・・少女?はにこっと人好きする笑顔を浮かべた。するとすぐに顔を痛みに歪めた。
「痛むの?」
「・・・口角をあげるとちょっと」
キィッと音を立てて到着した車から、二人転がり落ちるように降りてきた。
「―――レ ン さ まぁぁぁぁぁぁ!!・・・ってぅおおおおお?!」
「―――坊ちゃんっっ!!ああああよくぞ御無事・・・―――じゃない!?な、な、なんすかそのお顔はぁぁぁぁぁ!!」
「・・・二人とも、もう少し静かに・・・」
「れれれレン様―――――――――!病院に!今すぐ!」
「ぼぼぼぼ坊ちゃんの可憐なお顔に傷がぁ――――!!」
「ああもううるさいわよふたりとも!だまらっしゃい!!・・・さぁ、
・・・・・・・・・・・・・・・帰ろ。 ――――レン」
「・・・・うん」
「あ―――・・・ったく、 今日は最っ悪の一日だった!」
レンさん・・・?が差し出した手に、リンさん・・・?が手を重ねた。
少女・・・?は顔を押さえながら立ち上がり、ふとこちらを向いて申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
車に乗り込んで去っていく五人(運転手も含めて)を、それを見ていた私達は一言も発せずに見送った。
その後もしばらく一言も発さなかった。
後々、わかったこと。
この誘拐の犯人――― あの男達の依頼主 は結局不明で捕まらなかった。
カイトの推測では、鏡音家に恨みのある会社のどこかがはらいせに企んだことだろうという。
“女性の顔に傷”―――が引き起こすこととは、
鏡音家子女への精神的ダメージは勿論、初音家の長男の妻が社交場に顔を出さないとあったら会社にはマイナスにしかならないし、その前に下手すれば初音と鏡音の間に亀裂が入り婚約・協力関係も解消されるかもしれない―――――と。
このもう少し後に私達は、
犯人とその依頼主の目論見は完全に失敗したことを理解する。
続
(・・・・・・・・・・ん?え?)
2010年07月27日
新・ありがとうございますた36
テーマ:コメント返信
→ゆうま様
こんばんはー(私基準です)
「いつかはやると思った」って表現、犯罪やっちゃった人みたいですねwwwまぁ、アレもセクハラみたいなもんですけどw
ヤバイですか!
出来るだけヤバいまま突っ走ります!(?)
訪問感謝っ(´∀`)
→花様
こんばんはっ
汗だらだらですよねー最近棒アイスばっかり食べてます
ちょw確かにクオカミングアウト状態ですけどwww
そっちの世界www
きっとイケリンが何とかします、えぇ。
レンミク分少なくてすみません・・・この後もうちょい増えます!
コメントありがとうございました!
週末に書き溜めたんでさぁ、更新します。
ノシ
こんばんはー(私基準です)
「いつかはやると思った」って表現、犯罪やっちゃった人みたいですねwwwまぁ、アレもセクハラみたいなもんですけどw
ヤバイですか!
出来るだけヤバいまま突っ走ります!(?)
訪問感謝っ(´∀`)
→花様
こんばんはっ
汗だらだらですよねー最近棒アイスばっかり食べてます
ちょw確かにクオカミングアウト状態ですけどwww
そっちの世界www
きっとイケリンが何とかします、えぇ。
レンミク分少なくてすみません・・・この後もうちょい増えます!
コメントありがとうございました!
週末に書き溜めたんでさぁ、更新します。
ノシ
2010年07月24日
入れ替わりヴァーチャル・拾七
テーマ:ボカロSS(長)4
つづき★です。割と超展開かも。
よろしかったらどうぞ↓
――――――――そ、それは・・・・
「・・・・・・・リン・・・」
すぐ追いかけてきたのに追いつけなかった。見失った・・・・・・情けない。
体育は総合的にリンの方が出来る。
走るのに関しては短距離はリンの方が強くて、長距離なら僕の方が得意だった。
こんなに広い意味はあるのかと問いたくなるほど大きな建物。洋風で綺麗で、掃除が行き届いているなぁとぼんやり思った。
ふと、リンは外に出たのかもしれない、と思った。
渡り廊下を見つけたのでそこから外に出た。夕方から始まった会だ、すでに外は暗い。街灯の明かりで見える範囲にはリン(男装)は見当たらなかった。
「・・・・・・・・はぁ」
クオさんがあんなことをしたのは驚いたが、リンがブチ切れたのも驚かされた。
もともと気性の激しい姉だから激昂するのは珍しいことじゃないけど、基本そういうのは家でしかしないのだ。TPOをわきまえている、・・・というのだろうか。
そのリンがこんな場所であそこまで感情を爆発させたのだから。いろいろ聞きたいこともあったけど何はともあれ・・・どうにも心配だった。
「り・・・・・・・・・じゃない、レ――――――――――ン」
自分の名前を呼びながら捜すというのも変な感じしかしなかったが、今この恰好ではこうしか言えない。
「―――――――――――――――――さん、リンさん!」
後ろから呼ぶ声。呼ばれていると気付いて振り返ると、ミクさんがいた。心臓が一回高鳴って、早くなった。
「み・・・ミクさん?」
「こんなとこにいたんですか・・・こんな暗い所に、一人じゃ危ないですよ」
「・・・それは、こっちのセリフでもありますけど・・・・」
「え?・・・・あ」
ミクさんだってここに来るまで一人だった訳だから。
それに気付いた彼女は照れ臭そうに笑った。薄ぼんやり見える彼女の照れる仕草に、ついつい胸がきゅんとする。振る舞いが可愛い。何か叫び出したいくらい無性にときめいた。
「・・・・・レンさん、見当たりませんね・・・」
「はい・・・」
「一緒に探しましょう、広いけど・・・手分けしてたら迷子になっちゃいます」
「ふふ、そうですね」
普通に会話出来るのが嬉しい、――――でもこれも今日で最後なのだ。複雑な気分で二人並んで歩きだした。
顔を上げて彼女の顔をよく見ようとしたその時―――――――
彼女と僕の口が素早く、塞がれた。
「くそっ・・・」
女らしい言葉なんて出てこない。
あたしはそういう感性にはそぐわないのだ。
「あの野郎・・・・・・今度顔見たら・・・殺すっ・・・・」
当てもなく歩きながらあたしはぶつぶつとあの男への呪詛を吐く。腹が立って次第に走り出した。クオ、あたしは・・・・・・
・・・・あたしはこんな形は望んでいなかった。
おわりだ、おわりだ、おわりだ、おわりだ、―――――――――――――――――
レン(女装)に見られた。見られてしまった。元に戻った時・・・レンは、あたしは、どういう扱いを受ければいいのか?全部台無しだ、あたしの想定内にない展開だった。
建物の行き止まりみたいな場所につくと、あたしはそこの窓から脱出した(一階)。
誰に見られたって構わなかったが周りには誰もいなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅ」
・・・・畜生。
人は滅多に通らなそうな建物の間に入り込んで、しゃがんだ。
一人になりたかったのだ。
気持ちが落ち着かない。
しばらくその場でうずくまってじっとしていた。
今日は致命的についてない。
―――――――――すがるようなキスだった。
霞むような近さでも、彼の顔が切羽詰まっているのがわかった。
・・・・本当はあのキスに、応えたかったのだと、今更言っても誰も信じてはくれまい。
会場の近くに行くと、さっきの部屋の辺りに小さな人だかりが出来ている。何事かと思うとその中から二人飛び出して、近寄って来た。
・・・・グミとがっくんだ。
「――――――おじょ・・・・坊ちゃん!!ど、どこいってたんすか」
「どうしたのグミ・・・もうそろそろ帰ってもいい頃合いかなと思って出てきたんだけど」
「た、たいへん、たいへんたいへんたいなんっす!!そんなのんきなこと言ってる場合じゃないっす!」
だだだっと駆け寄ってきた般若のような顔のがっくんが言った。
「そうですぞ、り・・・・いや、レン様!御無事でよかった!・・・落ち着いて、聞いて、くだされ・・・・レン様が・・・じゃない、リン様が、・・・・・・・・・・誘拐されたでござる」
「・・・・・・・・・またまたぁ」
「冗談ではないでござるぅぅぅぅ」
蒼白なグミとがっくん。
この二人はそんな性質の悪いジョークは言わないと分かっていた。
「お嬢さんとミクお嬢様が怪しい男達に連れ去られるところを、使用人が目撃したっすよ。お二人とも庭にいたらしいんすけど」
「・・・・・・・・まさか敷地内にそんな輩がいるとは・・・・・不用心すぎたでござる。まだ犯人からの連絡はないそうでござるが、警察には連絡したそうでござる」
「・・・・・・・・・・」
わたくしは廊下のソファに座っているレンさんと鏡音の使用人二人の様子を少し遠巻きに見ていた。
今この事実(誘拐事件)を知らされているのはさっきまで一緒にいたわたくし、咲音夫妻、クオと初音・鏡音・巡音家関係者のみ。
メイコさんはカイトさんを落ち着けるのに忙しい。クオはいつも通りに見えるがやはりそわそわしている。レンさんが戻ってきたのに気付いているが話しかけられずにいるようだ。
・・・・あんなことの後だ、レンさんのショックは輪をかけて大きかろう・・・・
レンさんは黙って使用人の説明を聞いていた。・・・・そういえばあの使用人、わたくしのこと覚えているかしら。この間のパーティで会ったのだけれど・・・・・会ったといってもレンさんしか見ていなかった気もするけれど・・・レンさんのボディガードのような役割なのでしょうか。
「・・・・・・・・・――し――いだ・・・」
レンさんが何か呟いた。小さくて聞こえなかったが、呆然と力の抜けた顔が同情を誘う。
「・・り・・・・・レン様、何を」
「そんなわけないじゃないっすか」
「うそ!」
はっきりと言った彼の声は廊下に響いた。わたくしとクオ、メイコさんと取り乱していたカイトさんも一旦黙って彼の方を見た。(関係者が集まっているのは別室だ)
「坊ちゃん」
「レン様」
「・・・二人ともそう思ってるくせに!下手な慰め方しないでよ」
彼は座ったまま顔を両手で押さえて俯き、甲高い怒鳴り声を絞り出した。使用人二人は顔を見合わせて困っている。
「――――レン」
「「「!」」」
クオがレンさんに近付いて声をかけた。
今 貴 方 が 行 く の は 逆 効 果 で し ょ !
・・・と、きっとわたくしとメイコさんとカイトさんは考えたはずだ。だがそんなわたくし達の思いには気付かず、いや気付いているのかもしれないが、クオはレンさんの目の前に立った。瞬間、
・・・ごくり・・・・・・・と誰かが唾をのむ音が聞こえた気がする。
「・・・・悪かったな、レン」
「・・・・・・」
「俺があんなことしなけりゃ、リンさんとミクはこんなことにはならなかった。謝る」
レンさんは顔を押さえて俯いたままクオの声を聞いていた。静かに返事もした。
「・・・・・僕をさがして外に出てったんですよ。僕のせいです」
「お前が逃げ出したくなるようなことした俺が悪いんだろ」
「・・・まぁ、そうですけど・・・」
「正直者め。・・・・ここ座ってもいいか」
「・・・・・なんでここに?他にも座るとこあるでしょう」
「俺は、お前の隣りがいいんだよ。お前が苦しそうな時は尚更だ。・・・それをお前が拒否ろうとするから、腹が立ったんだ」
クオが真面目な顔でそう言った。
「・・・・・・・僕の苦しむ姿を見てほくそ笑むって訳ですか。最低ですよ」
「ちげぇよ、ばか。・・・ま、そういうひねくれたとこもいいんだけどな」
「・・・・・・・」
クオはレンさんの隣りに座り、彼の肩を抱きよせた。レンさんはそれに抵抗はせず、されるがままクオにもたれかかった。そのまま二人はずっと黙って座っていた。―――リンさんとミクが見つかったという知らせが入るまで。
わたくし達は驚きつつ、緊張して二人の動向を見守っていた。
クオは気付いているのかどうなのか、それは立派な告白だった。
「・・・・鏡音家の、リンお嬢様で間違いありませんね」
覆面をつけた男達は意外と丁寧な口調で言った。僕は頷いてみせる。(僕はレンだから)嘘だけど・・・
そんなに経っていないと思うが、非日常で気が動転していたのでどれくらい時間が経ったかよくわからない。口と目を塞がれ手足を縛られ、車で運ばれた先はどこだか知らない倉庫のような場所。まだ暗さに目が慣れなくて具体的な大きさはわからない。ダンボールがたくさん積まれている光景が男達の持つ懐中電灯でおぼろげに見えるだけだ。見てわかる男達の人数は五人。
僕は猿ぐつわを外された。ようやく声がはっきり出せる。
「・・・・もう一人のお嬢様はどこです」
ミクさんは車が別々だったようで、それが猛烈に心配だった。
「一緒に連れて来たお嬢さんですか。ご安心を、こちらに」
男は部下に顎で合図して、部下は後ろの方に引っ込んだと思うとミクさんを連れてきた。
「うぃんはん!(リンさん!)」
「ミクさん」
布を噛まされている彼女。見たところ服装も乱れてないし怪我もしていない(縛られてはいるが)。僕は心底ほっとした。
「特徴から言って、初音家のお嬢様のようですが間違いありませんね?」
「ほーぉ!はゎふほえはぅしへ!(そーよ!早くこれ外して!)」
「・・・あなた方の狙いはもともとあたしなのでしょう?彼女は関係ないので、帰して差し上げて欲しいのですが・・・」
「ほんは・・・はんへいあぃはふ!(そんな・・・関係あります!)」
「・・・元気なお嬢様ですな。御安心を、依頼主に禁じられているので手荒な真似は致しません・・・」
「身代金が目的ですか?」
「いいえ、これです」
男は懐から鋭そうな光るナイフを取り出して光にかざした。
「ほっほ、へあぁらはぇはひはいほへは!(ちょっと、手荒な真似はしないのでは!)」
ミクさんが暴れて男達に強めに押さえこまれた。ああ、大人しくしていてほしい。
僕は少し後ろに体を逸らしながら男を睨んだ。男はそれに特に反応は見せず淡々と言った。
「手荒な真似はしません。貴方が御自分でするのです」
「・・・・え・・・?」
「これで、御自分の顔に傷をつけていただきたい」
続
(・・・・・・・・・予想外)
よろしかったらどうぞ↓
――――――――そ、それは・・・・
「・・・・・・・リン・・・」
すぐ追いかけてきたのに追いつけなかった。見失った・・・・・・情けない。
体育は総合的にリンの方が出来る。
走るのに関しては短距離はリンの方が強くて、長距離なら僕の方が得意だった。
こんなに広い意味はあるのかと問いたくなるほど大きな建物。洋風で綺麗で、掃除が行き届いているなぁとぼんやり思った。
ふと、リンは外に出たのかもしれない、と思った。
渡り廊下を見つけたのでそこから外に出た。夕方から始まった会だ、すでに外は暗い。街灯の明かりで見える範囲にはリン(男装)は見当たらなかった。
「・・・・・・・・はぁ」
クオさんがあんなことをしたのは驚いたが、リンがブチ切れたのも驚かされた。
もともと気性の激しい姉だから激昂するのは珍しいことじゃないけど、基本そういうのは家でしかしないのだ。TPOをわきまえている、・・・というのだろうか。
そのリンがこんな場所であそこまで感情を爆発させたのだから。いろいろ聞きたいこともあったけど何はともあれ・・・どうにも心配だった。
「り・・・・・・・・・じゃない、レ――――――――――ン」
自分の名前を呼びながら捜すというのも変な感じしかしなかったが、今この恰好ではこうしか言えない。
「―――――――――――――――――さん、リンさん!」
後ろから呼ぶ声。呼ばれていると気付いて振り返ると、ミクさんがいた。心臓が一回高鳴って、早くなった。
「み・・・ミクさん?」
「こんなとこにいたんですか・・・こんな暗い所に、一人じゃ危ないですよ」
「・・・それは、こっちのセリフでもありますけど・・・・」
「え?・・・・あ」
ミクさんだってここに来るまで一人だった訳だから。
それに気付いた彼女は照れ臭そうに笑った。薄ぼんやり見える彼女の照れる仕草に、ついつい胸がきゅんとする。振る舞いが可愛い。何か叫び出したいくらい無性にときめいた。
「・・・・・レンさん、見当たりませんね・・・」
「はい・・・」
「一緒に探しましょう、広いけど・・・手分けしてたら迷子になっちゃいます」
「ふふ、そうですね」
普通に会話出来るのが嬉しい、――――でもこれも今日で最後なのだ。複雑な気分で二人並んで歩きだした。
顔を上げて彼女の顔をよく見ようとしたその時―――――――
彼女と僕の口が素早く、塞がれた。
「くそっ・・・」
女らしい言葉なんて出てこない。
あたしはそういう感性にはそぐわないのだ。
「あの野郎・・・・・・今度顔見たら・・・殺すっ・・・・」
当てもなく歩きながらあたしはぶつぶつとあの男への呪詛を吐く。腹が立って次第に走り出した。クオ、あたしは・・・・・・
・・・・あたしはこんな形は望んでいなかった。
おわりだ、おわりだ、おわりだ、おわりだ、―――――――――――――――――
レン(女装)に見られた。見られてしまった。元に戻った時・・・レンは、あたしは、どういう扱いを受ければいいのか?全部台無しだ、あたしの想定内にない展開だった。
建物の行き止まりみたいな場所につくと、あたしはそこの窓から脱出した(一階)。
誰に見られたって構わなかったが周りには誰もいなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅ」
・・・・畜生。
人は滅多に通らなそうな建物の間に入り込んで、しゃがんだ。
一人になりたかったのだ。
気持ちが落ち着かない。
しばらくその場でうずくまってじっとしていた。
今日は致命的についてない。
―――――――――すがるようなキスだった。
霞むような近さでも、彼の顔が切羽詰まっているのがわかった。
・・・・本当はあのキスに、応えたかったのだと、今更言っても誰も信じてはくれまい。
会場の近くに行くと、さっきの部屋の辺りに小さな人だかりが出来ている。何事かと思うとその中から二人飛び出して、近寄って来た。
・・・・グミとがっくんだ。
「――――――おじょ・・・・坊ちゃん!!ど、どこいってたんすか」
「どうしたのグミ・・・もうそろそろ帰ってもいい頃合いかなと思って出てきたんだけど」
「た、たいへん、たいへんたいへんたいなんっす!!そんなのんきなこと言ってる場合じゃないっす!」
だだだっと駆け寄ってきた般若のような顔のがっくんが言った。
「そうですぞ、り・・・・いや、レン様!御無事でよかった!・・・落ち着いて、聞いて、くだされ・・・・レン様が・・・じゃない、リン様が、・・・・・・・・・・誘拐されたでござる」
「・・・・・・・・・またまたぁ」
「冗談ではないでござるぅぅぅぅ」
蒼白なグミとがっくん。
この二人はそんな性質の悪いジョークは言わないと分かっていた。
「お嬢さんとミクお嬢様が怪しい男達に連れ去られるところを、使用人が目撃したっすよ。お二人とも庭にいたらしいんすけど」
「・・・・・・・・まさか敷地内にそんな輩がいるとは・・・・・不用心すぎたでござる。まだ犯人からの連絡はないそうでござるが、警察には連絡したそうでござる」
「・・・・・・・・・・」
わたくしは廊下のソファに座っているレンさんと鏡音の使用人二人の様子を少し遠巻きに見ていた。
今この事実(誘拐事件)を知らされているのはさっきまで一緒にいたわたくし、咲音夫妻、クオと初音・鏡音・巡音家関係者のみ。
メイコさんはカイトさんを落ち着けるのに忙しい。クオはいつも通りに見えるがやはりそわそわしている。レンさんが戻ってきたのに気付いているが話しかけられずにいるようだ。
・・・・あんなことの後だ、レンさんのショックは輪をかけて大きかろう・・・・
レンさんは黙って使用人の説明を聞いていた。・・・・そういえばあの使用人、わたくしのこと覚えているかしら。この間のパーティで会ったのだけれど・・・・・会ったといってもレンさんしか見ていなかった気もするけれど・・・レンさんのボディガードのような役割なのでしょうか。
「・・・・・・・・・――し――いだ・・・」
レンさんが何か呟いた。小さくて聞こえなかったが、呆然と力の抜けた顔が同情を誘う。
「・・り・・・・・レン様、何を」
「そんなわけないじゃないっすか」
「うそ!」
はっきりと言った彼の声は廊下に響いた。わたくしとクオ、メイコさんと取り乱していたカイトさんも一旦黙って彼の方を見た。(関係者が集まっているのは別室だ)
「坊ちゃん」
「レン様」
「・・・二人ともそう思ってるくせに!下手な慰め方しないでよ」
彼は座ったまま顔を両手で押さえて俯き、甲高い怒鳴り声を絞り出した。使用人二人は顔を見合わせて困っている。
「――――レン」
「「「!」」」
クオがレンさんに近付いて声をかけた。
今 貴 方 が 行 く の は 逆 効 果 で し ょ !
・・・と、きっとわたくしとメイコさんとカイトさんは考えたはずだ。だがそんなわたくし達の思いには気付かず、いや気付いているのかもしれないが、クオはレンさんの目の前に立った。瞬間、
・・・ごくり・・・・・・・と誰かが唾をのむ音が聞こえた気がする。
「・・・・悪かったな、レン」
「・・・・・・」
「俺があんなことしなけりゃ、リンさんとミクはこんなことにはならなかった。謝る」
レンさんは顔を押さえて俯いたままクオの声を聞いていた。静かに返事もした。
「・・・・・僕をさがして外に出てったんですよ。僕のせいです」
「お前が逃げ出したくなるようなことした俺が悪いんだろ」
「・・・まぁ、そうですけど・・・」
「正直者め。・・・・ここ座ってもいいか」
「・・・・・なんでここに?他にも座るとこあるでしょう」
「俺は、お前の隣りがいいんだよ。お前が苦しそうな時は尚更だ。・・・それをお前が拒否ろうとするから、腹が立ったんだ」
クオが真面目な顔でそう言った。
「・・・・・・・僕の苦しむ姿を見てほくそ笑むって訳ですか。最低ですよ」
「ちげぇよ、ばか。・・・ま、そういうひねくれたとこもいいんだけどな」
「・・・・・・・」
クオはレンさんの隣りに座り、彼の肩を抱きよせた。レンさんはそれに抵抗はせず、されるがままクオにもたれかかった。そのまま二人はずっと黙って座っていた。―――リンさんとミクが見つかったという知らせが入るまで。
わたくし達は驚きつつ、緊張して二人の動向を見守っていた。
クオは気付いているのかどうなのか、それは立派な告白だった。
「・・・・鏡音家の、リンお嬢様で間違いありませんね」
覆面をつけた男達は意外と丁寧な口調で言った。僕は頷いてみせる。(僕はレンだから)嘘だけど・・・
そんなに経っていないと思うが、非日常で気が動転していたのでどれくらい時間が経ったかよくわからない。口と目を塞がれ手足を縛られ、車で運ばれた先はどこだか知らない倉庫のような場所。まだ暗さに目が慣れなくて具体的な大きさはわからない。ダンボールがたくさん積まれている光景が男達の持つ懐中電灯でおぼろげに見えるだけだ。見てわかる男達の人数は五人。
僕は猿ぐつわを外された。ようやく声がはっきり出せる。
「・・・・もう一人のお嬢様はどこです」
ミクさんは車が別々だったようで、それが猛烈に心配だった。
「一緒に連れて来たお嬢さんですか。ご安心を、こちらに」
男は部下に顎で合図して、部下は後ろの方に引っ込んだと思うとミクさんを連れてきた。
「うぃんはん!(リンさん!)」
「ミクさん」
布を噛まされている彼女。見たところ服装も乱れてないし怪我もしていない(縛られてはいるが)。僕は心底ほっとした。
「特徴から言って、初音家のお嬢様のようですが間違いありませんね?」
「ほーぉ!はゎふほえはぅしへ!(そーよ!早くこれ外して!)」
「・・・あなた方の狙いはもともとあたしなのでしょう?彼女は関係ないので、帰して差し上げて欲しいのですが・・・」
「ほんは・・・はんへいあぃはふ!(そんな・・・関係あります!)」
「・・・元気なお嬢様ですな。御安心を、依頼主に禁じられているので手荒な真似は致しません・・・」
「身代金が目的ですか?」
「いいえ、これです」
男は懐から鋭そうな光るナイフを取り出して光にかざした。
「ほっほ、へあぁらはぇはひはいほへは!(ちょっと、手荒な真似はしないのでは!)」
ミクさんが暴れて男達に強めに押さえこまれた。ああ、大人しくしていてほしい。
僕は少し後ろに体を逸らしながら男を睨んだ。男はそれに特に反応は見せず淡々と言った。
「手荒な真似はしません。貴方が御自分でするのです」
「・・・・え・・・?」
「これで、御自分の顔に傷をつけていただきたい」
続
(・・・・・・・・・予想外)
2010年07月23日
新・ありがとうございますた35
テーマ:コメント返信
→花様
こんにちはっ(^∀^)ノ
今回はクオがアレなターンでしたw
男装リンはイケリン・・・なんかそのフレーズ萌えますね!女装レンは何レンと言えばいいのか・・・カレン(可憐)?とか?・・・・あ、いや、なんでもないです
(自分で言うのもなんですが)私もその場面好きです。シチュ萌え!
よかったら次も読んでくださいね〜
→咲山みら様
どうもー(・∀・)ノシ
かっこいいならよかったですvクオリンはちょっとバイオレンスなくらいが(私にとっては)丁度いいんですよねw
コメントありがとうございました!
ノシ
こんにちはっ(^∀^)ノ
今回はクオがアレなターンでしたw
男装リンはイケリン・・・なんかそのフレーズ萌えますね!女装レンは何レンと言えばいいのか・・・カレン(可憐)?とか?・・・・あ、いや、なんでもないです
(自分で言うのもなんですが)私もその場面好きです。シチュ萌え!
よかったら次も読んでくださいね〜
→咲山みら様
どうもー(・∀・)ノシ
かっこいいならよかったですvクオリンはちょっとバイオレンスなくらいが(私にとっては)丁度いいんですよねw
コメントありがとうございました!
ノシ
2010年07月20日
入れ替わりヴァーチャル・遠六
テーマ:ボカロSS(長)4
つづきぃです。ちょっとなんていうか、アレです。うん。
大丈夫って方は、どぞ↓
油断していた訳じゃない。
「―――――――――・・・はぁ?」
リン(男装)が不機嫌そうな顔でそう言った。
そりゃそう言いたくもなるだろう、彼―――カイトさんが言っていることは言いがかりだから。・・・リン(男装)にとっては。
僕は自分の顔が蒼白になっているのがよくわかった。
「・・・・・・リンさん、大丈夫ですか・・・?」
クオが「こりゃまずい」と言った顔で僕の心配・・・もとい、確認をしてきた。彼も悟ったらしい、カイトさんの勘違いを。
彼は“レン”にミクさんが振られたと思っている。
実際はミクさんを振ったのは“リン”であり、・・・・・・・・・・・・・“僕”だ。
あぁ、ややこしい。僕は本当はレンなのに。そしてあれはリンなのに。
「・・・は、はい」
大丈夫ではなさそうな返事になってしまったが、仕方ない。実際どうしていいか見当もつかない。ミクさんの様子を見れる余裕もなかった。
どうやって鏡音(うち)に辿り着いたか知らないけど・・・そりゃぁ・・・そりゃあ、考えないよな。女性が女性に振られるなんて考えないよね・・・・
本当ならあの場所(レン)にいるのは僕の筈なんだけど、あそこにいるのはリン(男装)だ。
・・・殴らせるなんて、させる訳にはいかない。
とめにいかなきゃ。
そう思って一歩踏み出そうとした時リン(男装)と一瞬目が合った。そしてあいつは言う。
「・・・・ああ、なんとなくわかりましたよ。言いたいこととやりたいことは」
面倒臭そうに眉をしかめて、左上の虚空を見ながら。あいつは敏いから本当にわかったのかもしれない。
「で?それがどうして貴方が僕を殴りに来る理由になるんです。
――――かんけいないでしょ、あんた」
後半は舌っ足らずな言い方で、子供っぽい。まるで挑発しているように聞こえた。
カイトさんの横顔は目を見張って沈黙している。怒っているのかもしれず、呆れているのかもしれない。
・・・・・・・リン(男装)は事態を把握しただろう。
そして、・・・わざわざ訂正して、ミクさんと僕にいたたまれない思いをさせることはしなかった。
今日は“僕”っぽく振舞うと約束しているのに素であんな受け答えをしてしまって―――――危険な。あんな言い方相手を煽るだけだ。
僕は踏み出した。
こんな時、・・・リンなら、踏み出すのに迷ったりはしない。
「・・・――――やめてください」
リンさんが、レンさんの前に立ちふさがった。
いつかの、レンさんがクオ兄さんのキスからリンさんを守った時を思い出させた。
「!・・・」
「カイトさん、・・・こんなことは紳士のすることじゃありません」
強い眼差しでそう言ったリンさんに、カイト兄さんが少しクールダウンしたように見えた。はっとして、私は慌ててカイト兄さんに駆け寄り腕を掴んだ。
「カイト兄さん!やめて、落ち着いて」
兄さんは時々、私を可愛がるあまり変になることがある。
中学生の頃クラスメイトの男子に意地悪されたと言えばその男子の両親の会社を買収して家族ごと左遷させたり(その事実は後で知った)、しつこく匿名ラブレターを送ってくる人がいると相談した時は指紋鑑定やらで犯人を突き止め暴力沙汰を起こしかけたこともある(メイコ姉さんが体を張って未然に防いでくれたそうだ)。
・・・・メイコ姉さんったら私の悩みのこと、話してしまったのか。
前科を鑑みて黙っていてくれると思ったのに。
なんだかんだ言ってメイコ姉さんはカイト兄さんに甘いのを忘れていた。
「ミク。だって・・・」
「だって じゃない!カイト兄さんは過保護過ぎるのよ、私は大丈夫だから!」
「・・・・でも、見ただろうあの悪びれない態度!ああいう輩はやっぱり一発」
「ああああもう、いいからぁぁ」
レンさんが悪びれないのなんか当然じゃない、彼は当事者じゃないんだから!そもそも振った方が罪悪感を感じなきゃいけない義務なんかないのよ。・・・リンさんは優しいから、きっと感じるだろうけど・・・・・
リンさんの方を見ると、彼女はカイト兄さんを睨んで言った。
「・・・弟を殴りたいのなら、どうぞあたしを先に」
「・・・・・・・・・・・・・へっ!?な、何言ってるのリンさん」
「そうですよ、そんなこと出来る訳」
「弟の至らなさは姉であるあたしの至らなさでもありますから」
「・・・そんな無茶な。女性を殴るなんてオレには・・・」
たじろいだカイト兄さんを薄く笑って、レンさんが言った。
「―――出来ないんなら、僕を殴るのは諦めるしかないですね」
「・・・レン」
リンさんがレンさんを窘めるように呼んだが、彼は意に介さない様子。カイト兄さんが目に見えて苛立つ。
「・・・っ・・・お姉さんの影に隠れて恥ずかしいとは思わないのか、君?」
「見知らぬ人間を殴ろうとしてた人に恥が何たるかを説かれてもねぇ」
レンさんは余裕を滲ませて返す。こういうところ、クオ兄さんに似てるなぁと思う。
「レン!・・・いい加減にしなさい」
リンさんが低い声で言った。彼女の本気で怒った声、初めて聞いた。・・・なんか凛々しくて素敵。・・・・・・こんな時に何考えてんのよ私の馬鹿。
「・・・はぁい」
レンさんが薄笑いで肩をすくめた。
一旦空気が落ち着いた(?)のがわかったのか、メイコ姉さんとルカ姉さんが飛び出してがしっとカイト兄さんを取り押さえた。
「!うわぁ」
「こんの・・・馬鹿!ここまで馬鹿だとは思わなかったわよ馬鹿っ」
「そうですわ、何考えてるんですの!」
「ご・・・ごめん〜・・・」
カイト兄さんはそっちに任せておこう。私は溜息をついた。そして目の前の・・・まだ好きな人と向かい合う。
「ごめんなさい、その・・・私のせいでご迷惑を」
「いいえ。平気ですから」
リンさんはにっこり、型どおりに笑った。心からの笑顔ではなく、愛想笑いだとわかって胸が痛む。レンさんは先ほどとは態度をころりと変えて遠慮がちに笑って見せた。
「僕の方こそ、何だかむきになってしまって・・・彼に申し訳なかったと伝えておいてくれますか」
「・・・はい」
レンさんは気を悪くしていないように見える。少し安心した。でも「彼(カイト兄さん)」は目の前にいるのに伝言を頼むあたり実は怒っているのかもしれない・・・・・
「俺からも謝っておきます。・・・カイ兄は普段は気のいい人なんですよ、滅多にあんなことはしません」
クオ兄さんが近付いてきた。
「そうですか・・・仲良くなれるように頑張ります」
リンさんがそう言うと、レンさんは何も言わずにふいっと何処かへ行こうと歩き出した。するとクオ兄さんがレンさんの後を追い、腕を掴んで言った。
「どこ行くんだ?」
レンさんは不思議そうに返す。
「会場に戻ろうかと」
クオ兄さんは不満そうな顔をした。そういえばクオ兄さん、今日はあまりレンさんと話していなかったな。
「・・・・ちょっと来い」
クオ兄さんは冷たい声になって、レンさんにそう言った。レンさんの腕を軽く引いたが、彼はそれに応じずその場から動かない。それにますます不機嫌になるクオ兄さんが怖い。
私は不穏そうな二人から二歩ほど離れた。
「・・・・なんですか?」
「いいから、話がある」
「ここではダメなんですか?」
「ダメなんだよ、わかるだろ?」
「・・・すみません、わからないです」
「・・・・・・・あぁ?」
何を怒っているんだろう、クオ兄さんが圧力のある声を出した。レンさんは怯えてるように見える。いや、これはただ嫌がっているのかもしれない。
「クオ兄さん?」「クオさん?」
私とリンさんの声が重なった。それがちょっと嬉しいとか思う。
「何でもないですよ、リンさん。―――なんだよ、レン。その態度」
「何か失礼があったなら謝りますが・・・」
「・・・どうしたんだよ?」
「・・・・・何でもないですよ?」
「・・・・・・」
二人(レンさんとクオ兄さん)の間に険悪な空気が流れていく。
あれ、おかしいな・・・この二人気が合うみたいでこの前まではやけに仲良かったはずなのに。空気に気付きカイト兄さんに説教していたメイコ姉さん達がこちらに視線を遣る。
「何でもないことないだろうがよ、あからさまに避けやがって」
「そんなつもりは・・・」
「俺、なんかしたか?」
レンさんが少し考える素振りをした。
「・・・・・・・あまり僕にばかり構ってくれるのも問題かなと思ってたんです」
「は?」
「貴方はもっとリンの近くにいないと」
「・・・・・・・・・・」
「・・・そろそろ男同士で気楽にやる時間は終わりにしましょう、ね」
レンさんは気弱な笑みを浮かべて、クオ兄さんの手を自分の腕からこともなげに剥がした。
なんだ、クオ兄さんたらレンさんに構ってもらえなくて拗ねてたのか。子供みたい。そういう事言うタイプじゃないと思ってたけど、クオ兄さんでもそういうことあるのね。
レンさんに避けられてイイ気味だわ。私ほどではないだろうけど落ち込めばいい。
・・・私、性格悪いのかなぁ・・・こんなこと考えて。いや、いいのよ、クオ兄さんだもん・・・・・・
「・・・・・・」
無表情になったと思ったら、クオ兄さんはいきなりレンさんの腕を再び掴んで彼を自分の方に向き合わせた。
そして、
「―――――――――――――――――――――――――ぇっ・・・」
「ひぁ」(私)
「ふぇ」(リンさん)
「え」(ルカ姉さん)
「「・・・・・・」」(カイト兄さん&メイコ姉さん)
私は瞳孔の周りが痛くなるほど目を見開いていた。
その場にいる全員がそんな状態だったんじゃないかと思う。レンさんだってそうだったから。
キスしていた。
クオ兄さんが、レンさんに。
この光景はおそらく私は、一生忘れないんじゃなかろうか。リンさんにキスされた時と同等くらいの衝撃度があった。あの時の鳥肌と今の鳥肌は完全に別物だけど。
何秒かして、レンさんが掴まれていない方の手で思いっきりクオ兄さんの横頭をどついて二人の唇が乱暴に離れた。
「っが・・・」
「・・・信じらんない・・・」
ぼそりとレンさんがそう言った。そこから、
「〜〜〜――――――っこのっ・・・キス魔・・・!
――――――――――――――――――し ね っ っ っ!!! 」
「しね」を吐き出すと同時にレンさんはクオ兄さんの股間を持てる力全てであろう勢いで蹴り上げた。
「っっ・・・・・・・・・・!!」
声にならない叫びをあげたクオ兄さんはその場に崩れ落ちる。
・・・当然の報い(?)だと思うけれどそれは見ていて相当痛い光景だった。腹部がぞわっとした。女性だってあんなことされたら相当痛いだろうし。
・・・・・・・いや、問題はそこではなかった。
レンさんがしたことよりもクオ兄さんがしたことの方が問題なのだ。
「・・・さいあく・・・」
そう呟いた不快そうな顔のレンさんは、早足で部屋を出て行った。
「――――――――りっ・・・・・レン!」
呆然とした顔からハッとして、リンさんは慌ててそれを追いかけた。
「・・・あ・・・・・・」
それを見送った後私達はどう行動を起こせばいいかわからず、痛みに悶えてしゃがんでいるクオ兄さんを見ていた。
多分、私以外の皆はなにがなんだかわからなくてまだフリーズしている。私もまだ本調子じゃないけど、考える余裕は出てきた。
・・・とりあえず・・・・・・・・結論としては、
・・・・・今日は、レンさんの厄日だな・・・・
続
(―――――相手が悪かった、それだけ)
大丈夫って方は、どぞ↓
油断していた訳じゃない。
「―――――――――・・・はぁ?」
リン(男装)が不機嫌そうな顔でそう言った。
そりゃそう言いたくもなるだろう、彼―――カイトさんが言っていることは言いがかりだから。・・・リン(男装)にとっては。
僕は自分の顔が蒼白になっているのがよくわかった。
「・・・・・・リンさん、大丈夫ですか・・・?」
クオが「こりゃまずい」と言った顔で僕の心配・・・もとい、確認をしてきた。彼も悟ったらしい、カイトさんの勘違いを。
彼は“レン”にミクさんが振られたと思っている。
実際はミクさんを振ったのは“リン”であり、・・・・・・・・・・・・・“僕”だ。
あぁ、ややこしい。僕は本当はレンなのに。そしてあれはリンなのに。
「・・・は、はい」
大丈夫ではなさそうな返事になってしまったが、仕方ない。実際どうしていいか見当もつかない。ミクさんの様子を見れる余裕もなかった。
どうやって鏡音(うち)に辿り着いたか知らないけど・・・そりゃぁ・・・そりゃあ、考えないよな。女性が女性に振られるなんて考えないよね・・・・
本当ならあの場所(レン)にいるのは僕の筈なんだけど、あそこにいるのはリン(男装)だ。
・・・殴らせるなんて、させる訳にはいかない。
とめにいかなきゃ。
そう思って一歩踏み出そうとした時リン(男装)と一瞬目が合った。そしてあいつは言う。
「・・・・ああ、なんとなくわかりましたよ。言いたいこととやりたいことは」
面倒臭そうに眉をしかめて、左上の虚空を見ながら。あいつは敏いから本当にわかったのかもしれない。
「で?それがどうして貴方が僕を殴りに来る理由になるんです。
――――かんけいないでしょ、あんた」
後半は舌っ足らずな言い方で、子供っぽい。まるで挑発しているように聞こえた。
カイトさんの横顔は目を見張って沈黙している。怒っているのかもしれず、呆れているのかもしれない。
・・・・・・・リン(男装)は事態を把握しただろう。
そして、・・・わざわざ訂正して、ミクさんと僕にいたたまれない思いをさせることはしなかった。
今日は“僕”っぽく振舞うと約束しているのに素であんな受け答えをしてしまって―――――危険な。あんな言い方相手を煽るだけだ。
僕は踏み出した。
こんな時、・・・リンなら、踏み出すのに迷ったりはしない。
「・・・――――やめてください」
リンさんが、レンさんの前に立ちふさがった。
いつかの、レンさんがクオ兄さんのキスからリンさんを守った時を思い出させた。
「!・・・」
「カイトさん、・・・こんなことは紳士のすることじゃありません」
強い眼差しでそう言ったリンさんに、カイト兄さんが少しクールダウンしたように見えた。はっとして、私は慌ててカイト兄さんに駆け寄り腕を掴んだ。
「カイト兄さん!やめて、落ち着いて」
兄さんは時々、私を可愛がるあまり変になることがある。
中学生の頃クラスメイトの男子に意地悪されたと言えばその男子の両親の会社を買収して家族ごと左遷させたり(その事実は後で知った)、しつこく匿名ラブレターを送ってくる人がいると相談した時は指紋鑑定やらで犯人を突き止め暴力沙汰を起こしかけたこともある(メイコ姉さんが体を張って未然に防いでくれたそうだ)。
・・・・メイコ姉さんったら私の悩みのこと、話してしまったのか。
前科を鑑みて黙っていてくれると思ったのに。
なんだかんだ言ってメイコ姉さんはカイト兄さんに甘いのを忘れていた。
「ミク。だって・・・」
「だって じゃない!カイト兄さんは過保護過ぎるのよ、私は大丈夫だから!」
「・・・・でも、見ただろうあの悪びれない態度!ああいう輩はやっぱり一発」
「ああああもう、いいからぁぁ」
レンさんが悪びれないのなんか当然じゃない、彼は当事者じゃないんだから!そもそも振った方が罪悪感を感じなきゃいけない義務なんかないのよ。・・・リンさんは優しいから、きっと感じるだろうけど・・・・・
リンさんの方を見ると、彼女はカイト兄さんを睨んで言った。
「・・・弟を殴りたいのなら、どうぞあたしを先に」
「・・・・・・・・・・・・・へっ!?な、何言ってるのリンさん」
「そうですよ、そんなこと出来る訳」
「弟の至らなさは姉であるあたしの至らなさでもありますから」
「・・・そんな無茶な。女性を殴るなんてオレには・・・」
たじろいだカイト兄さんを薄く笑って、レンさんが言った。
「―――出来ないんなら、僕を殴るのは諦めるしかないですね」
「・・・レン」
リンさんがレンさんを窘めるように呼んだが、彼は意に介さない様子。カイト兄さんが目に見えて苛立つ。
「・・・っ・・・お姉さんの影に隠れて恥ずかしいとは思わないのか、君?」
「見知らぬ人間を殴ろうとしてた人に恥が何たるかを説かれてもねぇ」
レンさんは余裕を滲ませて返す。こういうところ、クオ兄さんに似てるなぁと思う。
「レン!・・・いい加減にしなさい」
リンさんが低い声で言った。彼女の本気で怒った声、初めて聞いた。・・・なんか凛々しくて素敵。・・・・・・こんな時に何考えてんのよ私の馬鹿。
「・・・はぁい」
レンさんが薄笑いで肩をすくめた。
一旦空気が落ち着いた(?)のがわかったのか、メイコ姉さんとルカ姉さんが飛び出してがしっとカイト兄さんを取り押さえた。
「!うわぁ」
「こんの・・・馬鹿!ここまで馬鹿だとは思わなかったわよ馬鹿っ」
「そうですわ、何考えてるんですの!」
「ご・・・ごめん〜・・・」
カイト兄さんはそっちに任せておこう。私は溜息をついた。そして目の前の・・・まだ好きな人と向かい合う。
「ごめんなさい、その・・・私のせいでご迷惑を」
「いいえ。平気ですから」
リンさんはにっこり、型どおりに笑った。心からの笑顔ではなく、愛想笑いだとわかって胸が痛む。レンさんは先ほどとは態度をころりと変えて遠慮がちに笑って見せた。
「僕の方こそ、何だかむきになってしまって・・・彼に申し訳なかったと伝えておいてくれますか」
「・・・はい」
レンさんは気を悪くしていないように見える。少し安心した。でも「彼(カイト兄さん)」は目の前にいるのに伝言を頼むあたり実は怒っているのかもしれない・・・・・
「俺からも謝っておきます。・・・カイ兄は普段は気のいい人なんですよ、滅多にあんなことはしません」
クオ兄さんが近付いてきた。
「そうですか・・・仲良くなれるように頑張ります」
リンさんがそう言うと、レンさんは何も言わずにふいっと何処かへ行こうと歩き出した。するとクオ兄さんがレンさんの後を追い、腕を掴んで言った。
「どこ行くんだ?」
レンさんは不思議そうに返す。
「会場に戻ろうかと」
クオ兄さんは不満そうな顔をした。そういえばクオ兄さん、今日はあまりレンさんと話していなかったな。
「・・・・ちょっと来い」
クオ兄さんは冷たい声になって、レンさんにそう言った。レンさんの腕を軽く引いたが、彼はそれに応じずその場から動かない。それにますます不機嫌になるクオ兄さんが怖い。
私は不穏そうな二人から二歩ほど離れた。
「・・・・なんですか?」
「いいから、話がある」
「ここではダメなんですか?」
「ダメなんだよ、わかるだろ?」
「・・・すみません、わからないです」
「・・・・・・・あぁ?」
何を怒っているんだろう、クオ兄さんが圧力のある声を出した。レンさんは怯えてるように見える。いや、これはただ嫌がっているのかもしれない。
「クオ兄さん?」「クオさん?」
私とリンさんの声が重なった。それがちょっと嬉しいとか思う。
「何でもないですよ、リンさん。―――なんだよ、レン。その態度」
「何か失礼があったなら謝りますが・・・」
「・・・どうしたんだよ?」
「・・・・・何でもないですよ?」
「・・・・・・」
二人(レンさんとクオ兄さん)の間に険悪な空気が流れていく。
あれ、おかしいな・・・この二人気が合うみたいでこの前まではやけに仲良かったはずなのに。空気に気付きカイト兄さんに説教していたメイコ姉さん達がこちらに視線を遣る。
「何でもないことないだろうがよ、あからさまに避けやがって」
「そんなつもりは・・・」
「俺、なんかしたか?」
レンさんが少し考える素振りをした。
「・・・・・・・あまり僕にばかり構ってくれるのも問題かなと思ってたんです」
「は?」
「貴方はもっとリンの近くにいないと」
「・・・・・・・・・・」
「・・・そろそろ男同士で気楽にやる時間は終わりにしましょう、ね」
レンさんは気弱な笑みを浮かべて、クオ兄さんの手を自分の腕からこともなげに剥がした。
なんだ、クオ兄さんたらレンさんに構ってもらえなくて拗ねてたのか。子供みたい。そういう事言うタイプじゃないと思ってたけど、クオ兄さんでもそういうことあるのね。
レンさんに避けられてイイ気味だわ。私ほどではないだろうけど落ち込めばいい。
・・・私、性格悪いのかなぁ・・・こんなこと考えて。いや、いいのよ、クオ兄さんだもん・・・・・・
「・・・・・・」
無表情になったと思ったら、クオ兄さんはいきなりレンさんの腕を再び掴んで彼を自分の方に向き合わせた。
そして、
「―――――――――――――――――――――――――ぇっ・・・」
「ひぁ」(私)
「ふぇ」(リンさん)
「え」(ルカ姉さん)
「「・・・・・・」」(カイト兄さん&メイコ姉さん)
私は瞳孔の周りが痛くなるほど目を見開いていた。
その場にいる全員がそんな状態だったんじゃないかと思う。レンさんだってそうだったから。
キスしていた。
クオ兄さんが、レンさんに。
この光景はおそらく私は、一生忘れないんじゃなかろうか。リンさんにキスされた時と同等くらいの衝撃度があった。あの時の鳥肌と今の鳥肌は完全に別物だけど。
何秒かして、レンさんが掴まれていない方の手で思いっきりクオ兄さんの横頭をどついて二人の唇が乱暴に離れた。
「っが・・・」
「・・・信じらんない・・・」
ぼそりとレンさんがそう言った。そこから、
「〜〜〜――――――っこのっ・・・キス魔・・・!
――――――――――――――――――し ね っ っ っ!!! 」
「しね」を吐き出すと同時にレンさんはクオ兄さんの股間を持てる力全てであろう勢いで蹴り上げた。
「っっ・・・・・・・・・・!!」
声にならない叫びをあげたクオ兄さんはその場に崩れ落ちる。
・・・当然の報い(?)だと思うけれどそれは見ていて相当痛い光景だった。腹部がぞわっとした。女性だってあんなことされたら相当痛いだろうし。
・・・・・・・いや、問題はそこではなかった。
レンさんがしたことよりもクオ兄さんがしたことの方が問題なのだ。
「・・・さいあく・・・」
そう呟いた不快そうな顔のレンさんは、早足で部屋を出て行った。
「――――――――りっ・・・・・レン!」
呆然とした顔からハッとして、リンさんは慌ててそれを追いかけた。
「・・・あ・・・・・・」
それを見送った後私達はどう行動を起こせばいいかわからず、痛みに悶えてしゃがんでいるクオ兄さんを見ていた。
多分、私以外の皆はなにがなんだかわからなくてまだフリーズしている。私もまだ本調子じゃないけど、考える余裕は出てきた。
・・・とりあえず・・・・・・・・結論としては、
・・・・・今日は、レンさんの厄日だな・・・・
続
(―――――相手が悪かった、それだけ)
